Personal


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佐々木淳吾 ぢゅんご式大人の読書感想文
佐々木淳吾


誕生日
1976年11月25日
出身地
東京都 江東区
血液型
O型
担当番組
【テレビ】
ウォッチン!みやぎ
(月〜水)7:30頃〜8:00

【ラジオ】
うたまつり!
(日)18:30〜19:00
趣味
車、靴、時計、カメ
今、興味のあること
英語とイタリア語の親戚関係
得意ジャンル
007シリーズ
好きなタレント、芸能人
広瀬すず
ナタリー・エモンズ
私の好きな・・・
映画
「ニューシネマ・パラダイス」
「きみに読む物語」
「シャレード」
お気に入りの場所
愛車の運転席
私のよく行くお店
うなぎの開盛庵
藤崎百貨店
私ってこんな人です
落ち着きがない!
超マイペース!!
『太宰が青春小説を書いたら…』
2018/09/13


  小説を読んでいて「この言葉に出会えただけで手に取った価値がある」と思わず膝を打ちたくなることがある。

  太宰治の「パンドラの匣」(新潮文庫)。
  ここで太宰治を取り上げるのは、久しぶりだなあ。卑屈で、ユーモアがあって、現代にも通じる鋭い皮肉を残した。金言や警句にも、いちいちセンスを感じてしまうこの作家が、今も多くの人に愛されているのは、今回紹介する1冊からもよく分かる。
  表題作のほか「正義と微笑」を併録。どちらも200ページ前後の中編で、読みやすい。
  収録順に見ていく。「正義と微笑」は、俳優志望の少年・芹川進が初舞台を踏むまでの物語。
  達観した、厭世的な少年がしかし、血のにじむような努力で役を得て行くという、ゴリゴリの青春小説でありながら爽やかさの欠片もない(失礼!)異色の作品である。

  「パンドラの匣」は、戦後まもなく河北新報に連載された。まもなくというのは本当にまもなくで、終戦直後の昭和20年10月に連載が始まっている。
 太宰にとって戦後最初となる作品であり、初めての新聞連載小説だったそうだ。それが河北新報での発表だったとは、宮城県民にとってはちょっとしたネタである。
  ちょっと変わった結核療養所における、少年の闘病記。死の恐怖と隣り合わせにいながらも、ユーモアたっぷりに過ごす雲雀(ひばり)くんの日々は、終戦直後の混乱にあった当時の読者に、大いなる勇気を与えたのではないか。
 
  作品のプロフィールだけで長くなってしまった。今回、ここまでは前置きみたいなもんです。ごめんなさい。
  この言葉に出会えただけで手にとった価値がある…というのは「正義と微笑」の一節だ。
  中学校の若い英語教師が、無学な教員室の空気を見限り、生徒達の前で「クビになる前に、俺のほうから、よした」と演説をぶつ場面。
  お互いもっと勉強しよう…彼は、芹川ら生徒に語りかける。たとえば代数や幾何が、卒業すれば何の役にも立たないと思っているかも知れないが、それらが人格を完成させるのだ。勉強した内容を忘れてしまっても、その訓練の底に一つかみの砂金が残っているのだ…。
  どうだろう?原文はもっと長くて、迫力がある。僕は先生のこの辞任の弁に激しく打たれた。同時にこうも思った。
 「もっと早くこの言葉に出会っていたら!」(涙)

   


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